FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年3月15日放送

今回のお客様は、『夢古道おわせ』の店長坂本康之さんと、前店長・伊東将志さん。
坂本さんが店長になって2年が経ちました。
伊東将志さんからバトンを渡され、ここから何が発信できるか?
地域のためにどんなことができるか?
いろんなことを考えながらさまざまなことにチャレンジしています。

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■銭湯の灯を絶やさないために

坂本 小さな頃から銭湯に行くと、知らない人でもとても身近に感じたのを覚えています。
何かしたら怒られたり・・・今思うと、とても良い環境だったんですね。

『夢古道の湯』には身長計を置いているのですが、お子さんが自分の背の高さの線を引いて、自分の名前を書いているんです。
それがすごく嬉しくって。
自分自身、あまり銭湯に行かなかったのが、行くようになって、しみじみと良いな、と感じました。
庶民的というか、親しみがあるというか。
『夢古道』には地元の人も来るし、観光のお客さんも来るので、ミックスされた『中間施設』の役割も果たしているのかな。

銭湯は街の社交場なので、残して行きたいと思います。

伊藤 銭湯に毛が生えた程度のサイズの湯なので、平日は地域の人たち、週末は市外の方が多いですね。
志として、地域の成長を見守るというのがあっても良いなあと思います。


坂本 しかしお風呂をきれいに保つのは大変だと、スタッフ側になって実感しました。
『夢古道の湯』のお風呂掃除は、機械を使わず手で磨くんです。
ブラシもすぐにダメになります。
今までやっているスタッフの姿を見たら、ここまでしなきゃならないのか、と感じました。

風呂掃除は朝8時から2時間くらい。
スタートという気持ちになります。
たまには抜けたいな、と思う時もありますけど、一番風呂に入られるので頑張っています。
一番風呂に入るのは、お客様に出せる状態になっているかどうかを、自分の身体でチェックするため・・・という役得です(笑)


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■『銭湯家族プロジェクト』について

伊東 先ほど身長計の話が出ましたが、昔は全国のお風呂屋さんに身長計ってありましたよね。
今、体重計はあるけど、身長計がなくなっているんです。
僕も銭湯育ちだったんですが、身長を親御さんだけでなく、お客さんにも計ってもらっていた覚えがありました。
そんなしょっちゅう計っても伸びるわけないんですが、それでも計ってみたいものでしょ?

また、さっき坂本さんが言ったように、社交場であり、地域の人たちが子供を叱ってくれるような、そんなあたたかい環境が銭湯にはあります。
身長計を一つのアイテムとして、それを残すという行為そのものが、銭湯のあたたかさを守ることにつながるのでは。
その思いで「全国の銭湯に身長計を置きませんか」という『銭湯家族プロジェクト』を始めました。
全国の銭湯に尾鷲ヒノキの身長計を置いてもらおうというもので、銭湯を大事にして行きたいと言う思い、銭湯で生まれるあたたかさを守っていきたいと願いを込めたプロジェクトでした。
『夢古道おわせ』が仕掛けるプロジェクトは、意外と全国展開が多いので、全国の銭湯がなくならないように・・・との思いが入っています。


坂本 開催したのは去年の3月でしたね。
52軒エントリーいただいて、100本くらい売れました。


伊東 参加費を払っていただいたら、1本差し上げるという形で。


坂本 置いてもらっているところに話を聞くと、やっぱり身長計の回りにお孫さんやおじいさんが集まっているそうです。
実際、それを機に購入してくださる方もいて、昨日も新潟から注文をいただきました。
日本全国に尾鷲ヒノキが広まるのは嬉しいし、尾鷲の人が旅行先などでそれを見つけたら、また嬉しいと思うんですよね。


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■尾鷲のために頑張っているお母ちゃん

坂本 『お母ちゃんのランチバイキング』のお母ちゃんたちは、「尾鷲のために」、そればかりを考えてくれているんです。
自分のためじゃないんですよね。
尾鷲をどうやって発展させていこうか・・・利益ではなく地域のために、尾鷲のためにを考えているんです。
怖いですけどね、僕もよく怒られますし(笑)


伊東 一時期は僕も、利益の追求ばかりを考えていた時期があり、うまくいかなくて赤字を出したこともありました。
それが、今の坂本さんのような考えになってから、業績が上がったんですよね。
利益を追求していく方が、よそから見ると、商売のことしか考えていないととられがちで支持されない。
尾鷲のことを考えて、そんなイベントばかりをしていると、お客様から支持される。
面白いですね。
最近また、さらにお客さんが増えているようで、嬉しいです。


坂本 ここに『ふるさと』を求めて来られるお客さんも多いですね。
高級な食材とかは、お金を出したら食べられるでしょう?
お客様が求めているものは、そういうものではないんですね。
また、都会の人だけでなく近隣の町の人もよく来てくださいます。
それも若い人が多いんですよ。
若い人にとっては『お母ちゃんのランチバイキング』は、新しい味に感じられるんですね。
僕は和歌山県太地町出身なんですが、尾鷲の料理で一番驚いたのが、『クキ漬け』。
それも生節と混ぜて食べるなんて、その感覚が一切ありませんでしたから。
でもそれが美味しいんですよ、尾鷲の食べ方で。
それからサンマ寿司にカラシを付けるのにも驚きました。
太地町はわさびなんですよ。
こちらもビックリしましたが、食べてみると美味しいですね。


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■今でも夢古道のことを気にかけてくれる、かつてのインターン生

伊東 僕が店長だった時に始めた、大学生の長期インターンシップ受け入れ。
一番最初に受け入れたのは、福島県いわき市から来た女の子でした。
女性の働く環境や地域活性に対して興味のある子で、「尾鷲ってどこですか!?」から始まって、来てくれました。
彼女は、特別何かに秀でた能力を持っているわけではなかったんですけど、一生懸命、ここのために、自分の興味のために取り組んでくれたんです。
彼女自身、は地域の人が地域のためにがんばっている姿に感動した、と言ってここを選んでくれたそうです。
あれから5〜6年たち、彼女はもうすぐ結婚するんですよ。
一緒に働いた子が結婚する年になるなんて、感慨深いですね。

振り返ると、インターンシップに取り組むきっかけになったのが彼女。
あれから始まっているなあ、と思いますね。


坂本 インターン生はすごいですね。
家を一回も離れたことのない子が、親元を離れてきてくれて、頑張ってくれてね。
そしてインターンを終わっても夢古道をとても気にかけてくれる。
そういうのが嬉しいです、やっぱり。

『夢古道おわせ』がオープンしてから、来られたお客様は、およそ20万人。人口2万人の町で、これだけ多くのお客様をお迎えしてきました。
これから高速も伸びるので、『夢古道おわせ』を拠点にしてもらって、こちらから町へお客さんを誘導したいですね。
尾鷲の町全体を活性化させたいです。